宮澤伊織 『ラブと貪食の黒戮呪剣〈コルドリクス〉』 (MF文庫J)

殺さないまま旅立つことができて、よかった。
本当によかった。

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幼い弟妹たちのため,盗賊団の下っ端として稼いでいたジント.ある日,仲間たちと旧街道で獲物を待ち伏せしていたところ,大剣を持った少女にひとり残して全滅させられてしまう.その剣は人の魂を贄とする呪われた魔剣だった.
自分を殺そうとした腹ペコ少女と幼い弟妹たちを連れての逃走劇.元ネタはマイケル・ムアコックなのかな,と思っていたらそのとおりだったようだ(自分は読んでいないので細かく指摘できるわけではない).本格的なファンタジーでありながら,しっかりとライトノベルらしく仕立てているという印象.追われ,逃げ続ける日々や,好意を持った相手を殺そうとする呪われた剣からもたらされる途切れない緊張感と,その合間のちょっとした安らぎのバランスが噛み合って本当に良い.さすが,安定してうまくて楽しい,良い作品でした.