手代木正太郎 『魔法医師(メディサン・ドゥ・マージ)の診療記録5』 (ガガガ文庫)

魔法医師の診療記録 5 (ガガガ文庫)

魔法医師の診療記録 5 (ガガガ文庫)

「私は、魔法助産師。乳汁を自在に操る術を心得ている」
トロトゥーラの瞳が、きんっ、と輝いた。
回避した円盤が弧を描き戻り、またもフィンゼンを襲う。咄嗟に竦み下がるフィンゼン。
「乳汁を高速回転。その回転速度はマッハ三。鉄をも切断し得る。況んや、貴様の素っ首をや」

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そして今再び目覚めた時、さらに多く――百人近くの社員が殺傷されているではないか!
減少した社員を補充せねばならない。社員を交配させ、新たな社員を生み出さねばならない。
全社員を発情させるのだ。女たちに排卵させるのだ。受精させるのだ。

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ガマエの真相を求めるクリミアとヴィクターは,稀代の発明家ゲルハルト・コッホが住むという島を訪れた.二人の前に,ヴィクターを「黙示録の悪魔」(ディアブル・ドゥ・アポカリプス)として付け狙う殺戮者が現れる.
地獄のような孤島を舞台に繰り広げられる悪夢のような死闘,そして医学の未来の行方.江戸川乱歩のようなめくるめく地獄と,山田風太郎のような品のない妖術の忍法帖悪魔合体にして,会社SFというかいかにも現代風なディストピアSFでもある,という.「地上に現れた地獄」を凄まじい密度で濃密に,完璧に描いていると思う.正直,作中で語られる仕掛けはわかったようなわからんような,煙に巻かれた感じではあるのだけど,作風的にはとても正しい気がする.そういうところも含めて,本当に最高な作品だと思うのですよ.皆も読むといい.