白樺みひゃえる 『世界の終わりに問う賛歌』 (ガガガ文庫)

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)

「……先生は、自分が失敗した原因はなんだと思いますか」

「そうだな、いくつかあるが……」

思案顔をし、言った。

「一番は炉心が人間だったこと、かな」

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫) | 白樺 みひゃえる |本 | 通販 | Amazon

魔導が衰退し,世界には科学技術が発達しつつあった.ヴィルトハイムファミリーの構成員である拷問官,ブルクハルトは,相談役(コンシリエーレ)から任務を与えられる.それは,「次世代型発魔炉」の開発プロジェクトに参加し,とある少女をできるだけ長い間殺さずに痛めつけることだった.

第11回小学館ライトノベル大賞審査員特別賞受賞作.あらすじを読んでSFかファンタジーかな,と思っていたら,エネルギー問題解決のため,拷問相手をいかに殺さず長期運用するか,プロジェクトで取り組むのが物語の柱だという.思わぬところから話が始まってびっくりしたのだけど,意欲的すぎるテーマにあっという間に引き込まれた.拷問にペインコントロールの概念を持ち込むのも驚いたのだけど,ひょっとして拷問業界では一般的なんだろうか.

思わせぶりな伏線(のようなもの)が回収されずに置かれたり,全体的にとっ散らかった印象も強い.特に後半は荒っぽいのだけど,意欲的なテーマをごちゃっとぶち込んだ作者の姿勢は買える.良い意味での新人らしい勢いがある.楽しゅうございました.