冲方丁 『マルドゥック・アノニマス 2』 (ハヤカワ文庫JA)

人間が群をなすと、そこに独自の善悪の基準をもうけるようになる。ルールができあがってゆく。そのルールの外にいる者を、人間とみなさなくなる。それまで敵意が生まれるはずのなかった場所に、強迫と強奪がまかり通る。そしてその頃には、群を成り立たせる欺瞞は、不可侵にして聖なるものとして扱われるようになる。なんぴとともそれを覆せず、疑念を呈する者は、勢力の敵とみなされる。やがてその疑念が一つまた一つと忘れ去られ、新世代にとっては生まれたときからの常識となったとき――勢力は社会とのものとなる。

そうやって人間は、繰り返し繰り返し、社会を作り変えてきたんだ。

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サムの遺志を継ぎ,〈クインテット〉への潜入捜査を続けるウフコック.〈クインテット〉のリーダー,ハンターがアンダーグラウンドで勢力を伸ばしていくことを,ウフコックはただ見ることしかできなかった.

均一化(イコライズ)」という思想を胸に,知恵と暴力で都市を制圧してゆくハンターの手管をひたすらなぞっていく.ピカレスクロマンというのかな.実質的なこの巻の主人公ハンターと,傍観することしかできないウフコックの歯がゆさと無力さの対比が凄まじいことになっている.これが導入の場面にどうつながっていくのか.まだまださっぱりわからない.また間が空いているようだけど,楽しみにしております.