古川春秋 『エンドロール』 (星海社FICTIONS)

エンドロール (星海社FICTIONS)

エンドロール (星海社FICTIONS)

近所の焼肉屋に入り、特上のロースとカルビだけを頼み、大ライスを頬張った。それに生ビール一杯を空けると、もうお腹いっぱいになった。

時間を潰すために一度家に戻る。満腹でソファに腰掛けていると、いつの間にか寝入ってしまっていた。

起きた時にはすでに日付が変わっていた。

さあ、死のう。

Amazon CAPTCHA

現状に不満はないが未来には不安がある.特に死にたいわけではないが生きている理由もない.清掃会社に勤める秋吉浩平は,ただなんとなく死んでみることにした.死ぬからには,やるべきことをやりたい.1ヶ月後の誕生日に自殺することに決めた秋吉青年は,10項目のリストを作ってその日までひとつずつ埋めていくことにする.

「死ぬ理由がないが,それ以上に生きる理由がない」という青年が死ぬまでにやり遂げたい10の出来事.ガチャを貯金の許す限り回すだとか,いい肉を腹いっぱい食べるだとか,小さくて身近な欲望を,淡々とこなしていくさまを描いていくという.自分で決めた死を前にした小説だけど,ヤケクソではなく,いわゆる人生やり直しともだいぶ違う.なんとも不思議なテンションが一貫している.ご都合主義的な部分もかなりあるけど,そのぶん気楽に読めるというところもあるのかな.