木村航 『パラプラ学園』 (スニーカー文庫)

パラプラ学園 (角川スニーカー文庫)

パラプラ学園 (角川スニーカー文庫)

この〈森〉にいるのはみんなかつて人間だったものたちだ。今は植物だ。一定の時期が来るとパラプラは、共生者の肉体を乗っ取って植物体と化し、定着生活を送るサイクルへと移行する。これを「根下ろし」と呼ぶ。おおむね更年期を迎えると発症する、現生人類の宿痾だ。治療法はない。むろんパラプラと共生せず生きるなら話は別だが、その場合は健康とは縁遠い一生になるだろう。そう長くはあるまいが。

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共生植物であるパラプラによって人類は滅亡を免れた.それからいくつか世代を重ねた現在.自立ユマニテ学園では,今日も今日とて植物と共生する中学生たちの学園生活が送られていた.

ちょっと変わったところのある学園日常連作短編.かと思いきやの,ポストアポカリプスで,ポストヒューマンもの.大きく変わってしまった世界の有様と,それが日常になったことをちょっとずつにおわせながら,最後まで日常ものの体はそのまま維持される.

タイトル通りのことをやる「牛を剥く」や,共生の行く末を描いた「墓参り」といった陽気なホラー風味のある章が個人的には特に良かった.全体的には良い意味で初心者向け,だけど決して手を抜かないポストアポカリプス,かつポストヒューマンだと思う.安直だけど「人類は衰退しました」の不穏さが好きなら読んでみるといい,それぞれの共通点とか違うところとかを考えてみるといい.楽しゅうございました.