赤城大空 『出会ってひと突きで絶頂除霊!』 (ガガガ文庫)

出会ってひと突きで絶頂除霊! (ガガガ文庫)

出会ってひと突きで絶頂除霊! (ガガガ文庫)

「わたし、きょにゅう?」

一人目は震えながら「大きくは、ない」って言った。だからなぐった。

「わたし、きょにゅう?」

二人目は「う、うん」って言ってくれた。だからコートを開いて、

「これでも?」

って確認してみた。そしたら眼が泳いでた。だからなぐった。

五人目も、十人目も――なぐった、たくさんなぐった。

退魔師を養成する高校である都立退魔学園に通う古屋晴久には,他人に秘密にしている能力があった.それは突いた相手を生者死者問わず絶頂させ,昇天させる能力,絶頂除霊(テクノブレイク).落ちこぼれで通っていた晴久はある日,呪いの眼,淫魔眼を持つ少女,宗谷美咲に能力を見出されてしまう.

『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』の作者の最新作は,女の子のアヘ顔を書きたかったという退魔活劇.「下セカみたいに表現の自由がどうたら性教育がどうたらという大義名分すらなく」書いたということで,けっこうノリノリで書いている感がある.前作では溢れんばかりだったダジャレや下ネタは抑え気味だったけど,ここぞのときの言語感覚は相変わらず素晴らしいものがある.怪異乳避け女というネーミングと,そこからのストーリーの拡げ方には感心した.絶頂除霊(テクノブレイク)や淫魔眼という眼の呪いがキーになっているところや,能力の発現の仕方がある意味『月姫』のようでもある.「下セカ」よりSF分は減ってるけど,軽快でかえって読みやすくなっている気がするし,「下セカ」で脱落したひとも読んでみるといい.