銅大 『SF飯:宇宙港デルタ3の食糧事情』 (ハヤカワ文庫JA)

SF飯 宇宙港デルタ3の食料事 (ハヤカワ文庫JA)

SF飯 宇宙港デルタ3の食料事 (ハヤカワ文庫JA)

「混ざるんだよ、性欲は。いろんな欲望が。快楽だけじゃなくて、社会的なステータスとか、思想信条とか。その友達のように、人生を語るヤツも出てくる。おれの嫁さんだと、こういう形で性欲を解消することには子供のころから大反対だった。いちど、こっそり行こうとして見つかって、ギャン泣きされてなぁ……」

人類の保護者であった〈太母〉が〈涅槃〉へ旅立ったあとの時代.実家を勘当され,辺境の宇宙港デルタ3へたどり着いた若旦那は,昔の知り合いの少女,コノミに再会する.祖父の遺した食堂を再開させようと頑張るコノミのため,居候をしつつお手伝いをすることになる若旦那であった.

SFあるあるを入れ込んだお仕事小説.「異世界食堂」スペオペ版というのかな.B定食をはじめとした,「食事の味気無さ」の描写に関しては間違いなく随一だと思う.まったく美味くなさそうだけど決して不味いわけでもない,文字通りの味気なさが口の中に浮かんでくる.それを落語のようなテキストで語るという試みは面白い.ただ,それが小説としての面白さにつながっていないかなあ.食い物描写以外は古臭いSF(それもかなり)でしかなく,端々からおっさん臭さがにじみ出ていたのが読んでいて辛かった.