鵜飼有志 『死亡遊戯で飯を食う。2』 (MF文庫J)

「ふざけるな」

指が残り一本になったところで、御城(ミシロ)は言った。

「ん。なに?」

「ふざけないでくださいまし!!」

〈キャンドルウッズ〉から三ヶ月。しばらくゲームから離れていた幽鬼(ユウキ)は、十回目のゲームに復帰する。目標とする九十九連勝へ向けて、勝ちを積み重ねる幽鬼(ユウキ)。やがて、プレイヤーに〈呪い〉が降りかかると言われる〈三十の壁〉に差し掛かろうとしていた。

どいつもこいつも、なぜ生身にこだわるのか。

答えは単純。

肉体を捨てたプレイヤーは長生きできないと、みんな知っているからだ。

金持ちの見せ物として執り行われる(とされる)、肉体改造された女の子たちの殺し合いの物語第二巻。変に取り繕うことをせず、機械的にただただ書いた、みたいな感覚があった。白のワンピースやら露天風呂やら、ベタベタな舞台装置で、それぞれにドラマを背負った少女たちが殺し合いあっさり死んでいく話なのに、欲が感じられないというか、闇とも呼べない、虚無のようなものを中心に感じるというか。似た小説として「魔法少女育成計画」を思い出したんだけど、それを強烈に脱臭した感じというか。良いと思います。

朝依しると 『VTuberのエンディング、買い取ります。』 (富士見ファンタジア文庫)

魂の想いは当事者になって初めて思い知った。

この結末は酸鼻のきわみだ。

VTuberが引退するというときには、とくにファンの間で通夜が始まる。その悲しみの声はファンが多いほど膨れ上がり、阿鼻叫喚の中で見送られることになるのだ。

しかも、その声は死んだ魂にも直接届いてしまう。

VTuber、夢叶乃亜。彼女を推すことに青春のすべてを捧げていたトップオタの高校生苅部業は、乃亜の大炎上と引退によって、一夜にしてその人生を一変させることになる。それから一年。ショックから髪が白くなり、高校を休学していた業のもとに、かつて乃亜の推し仲間だった少女が現れる。

第35回ファンタジア大賞大賞受賞作。「35年の歴史の中で、『ファンタジー』と『バトル』要素がない初めての〈大賞〉受賞作」は、推しの最期のプロデュースを通じて「魂」の救済と再生を描いた物語。VTuberの中身という意味の魂でもあり、文字通りの「魂」でもある。

現在のインターネットやVTuber、「推し」の概念を当事者性を持ってリアルに、そして非常に抑うつ的に切り取っていると思う。VTuberの引退、あるいは「死」の持つ重みへの、ある種の暗い情熱を強く感じる。なにせ、セクハラを繰り返すプロデューサーを炎上させようというのに「今はこの程度のセクハラ発言じゃ炎上しないから」と言って、過去の人種差別的発言を掘り起こし、さらに上海のオタクの協力を仰いでビリビリでのイベント直前に放出するという。作中ではYoutubeから質問箱まで、もろもろのインターネットサービスがほぼ実名で登場する。そういう意味でもリアリティと「現在」のスナップショットを感じさせる物語だった。

二月公 『声優ラジオのウラオモテ #08 夕陽とやすみは負けられない?』 (電撃文庫)

「あなた、本当にわたしのこと好きよね」

「そりゃねー……」

「…………………………………………………………」

否定しなさいよ……。気を抜きすぎでしょ……。

ぼんやりとお湯に浸かってるからって、本音を漏らさないでほしい……。

ティアラ☆スターズプロジェクトも後半。今度はユニットを変えて、夕陽とやすみは同じユニットに入ることになる。夕陽をリーダーに据えた新ユニットだったが、年上の新人、羽衣纏はなにか思う所があるようで、ギクシャクした始動になってしまう。

「アイドル声優活動をしたくない」という年上の後輩にかつての自分を重ね、リーダーとして成長を見せる夕陽。そんな夕陽を見て不安を覚えるやすみ。そして始まる二人の同棲生活。確かな成長と飛躍が描かれる第八巻。乗り越える壁だったりすれ違いだったりは当然のようにあるのだけど、ライバルであり友人であり嫌いなやつという二人の関係が、なんというか完全にできあがってる感がある。良い意味で安心して読める。というかやっぱりアイマスじゃないですか(あとがき)。アニメ化も決定したことだし、ますます楽しみになってきました。


あぁ。

悔しい。

悔しい悔しい悔しい――!

ここまで、ここまでやるか! あぁ最高だわ、そして最低だわ!

昂揚感はとっくになくなり、悔しさだけで胸がいっぱいになる。

香坂マト 『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います6』 (電撃文庫)

「ま、待て、三日って長期なのか? 週にある二日の休みにちょっと何かくっつけばあっという間に形成されそうな連休……」

「やかましいわ!! そもそもクエスト・カウンターは週休二日じゃなくて、一週間に一日しか休みがないのよ!」

「そ……それは……すまない……」

社会人のわずかな楽しみ、長期休暇を前に、どっかと降り注ぐ新たなダンジョン発見の報せ。このままではただでさえ短い休暇が消えてしまう……。休暇のため、またもや地獄の残業の日々。そんな折、残業で動けないはずの処刑人にそっくりの偽物が現れたという。

偽の処刑人登場、あまりに短い長期休暇、短い帰省、姉が好きすぎるアリナの弟登場、そして強大な敵の登場と、多くないページにけっこうな情報量が詰め込まれた第六巻。アリナを今のアリナたらしめた幼いころの思い出を乗り越え、大切な人たちのために未来を向く。なんだかんだと前向きで強い物語には元気をもらえる。ストーリー的にはクライマックスに突入しそうな雰囲気だけどどうなるんだろう。引き続き楽しみにしています。

悠木りん 『星美くんのプロデュース vol.1 陰キャでも可愛くなれますか?』 (ガガガ文庫)

「ボクは、誰かの『可愛くなりたい』って気持ちを絶対に笑ったりしない。だって、それってすごく勇気のいることだって、分かってるから」

自称“最強に可愛い”女装男子、星美次郎。周囲には秘密のまま、女装して渋谷や原宿を歩いていた彼だったが、ある日隣の席の陰キャ女子、心寧四夜に正体がバレてしまう。心寧は、秘密を守る代わりに自分を可愛くしてほしいと条件を出す。

これまで僕が心寧にかけてきた言葉は、全部、僕がほしかった言葉だ。

『可愛くなれる』も『着たい服を着ればいい』も『似合ってる』も、全部ぜんぶ。

誰かに言ってほしかった。その言葉で、この身の内で僕自身が僕を否定する声を、かき消してほしかった。

僕は、僕を肯定したかった。

“最強に可愛い”ことに自負を持つ女装男子、化粧もしたことのない陰キャ女子にファッションやメイクを伝授する。陰キャ女子を“可愛く”するプロデュースの日々を描くラブコメ。女の子の格好でいっしょに服を選んだり、メイク講座を開いたり。メイクやファッションの描写はシンプルでありつつ非常にキュートで、解像度はかなり高いと思われる。まったく対照的なふたりのやり取りはコミカルで、すいすいと読ませられる。

生きたいように生きることと「普通に生きる」ことの間にあるギャップだったり、そんな人生における自己肯定感の意味だったりを、キャッチーかつコミカルに浮き彫りにしていたと思う。直接関係ないけど、「ミモザの告白」と「星美くんのプロデュース」が同じレーベルで同じ月に出るのいいですね。続きを楽しみにしています。



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