水沢夢 『SSSS.GRIDMAN NOVELIZATIONS Vol.2 ~世界終焉の怪獣~』 (小学館)

「ホント、上手くいかないなあ。アンチといいさ……何なの」

「じゃあどうして、私に心を創ったの?」

「創ってないって。君が勝手に持ってると思ってるだけ」

植物怪獣ガイヤロスを倒したグリッドマン.これで元の時間に戻れると思った裕太だったが,気がつくと「あの日」に戻っていた.またもや時間ループかと訝しむ裕太.しかし,今回は六花や内海,新世紀中学生の面々も記憶を共有しているらしい.

心を持ってしまった怪獣は何を思う.そこにあるのはもうひとつのツツジ台,そしてもうひとりの神.TVアニメ8話と9話の間にあった(かもしれない)出来事を描いたスピンオフ小説の第二巻.ここでしか見られないフルパワーグリッドマンの新形態あり,グリッドナイトの登場あり,裕太とアンチのサービスシーンもあるよ.スピンオフだからできること全部入り.テキストも含めて原作の空気を出すことに成功している.きれいにまとまった良いスピンオフだと思いました.



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水沢夢 『俺、ツインテールになります。19』 (ガガガ文庫)

俺、ツインテールになります。19 (ガガガ文庫)

俺、ツインテールになります。19 (ガガガ文庫)

  • 作者:水沢夢
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2020/02/18
  • メディア: Kindle版

「首領はツインテールを愛するあまり、ゼロのツインテールを完成させてしまったんだ」

俺が言葉に熱を込めるにしたがって、愛香たちの周囲に疑問符が浮かんでいくようだった。

「……いや、ツインテール捨て去ったって、それってツインテールじゃないでしょ」

アルティメギルの本拠地に乗り込むも,首領との戦いに敗れたツインテイルズ.首領は逆に総二たちの総攻撃を宣言する.アルティメギルとツインテイルズの戦いはついにクライマックスを迎える.

デビュー作となる一巻から約8年,20冊を費やしたシリーズの完結編.∞のツインテールvs.ゼロのツインテール.世界に正体をばらされてしまったヒーロー.それぞれに決着がつけれらる因縁.ヒーローと人々の関係.特撮ヒーローもの最終回のお約束をぎゅっと詰め込んだ最終巻になっている.正直なところ中だるみも長いシリーズではあったけど,終わりよければの精神.良い最終回だったと思います.



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岩城裕明 『事故物件7日間監視リポート』 (角川ホラー文庫)

事故物件7日間監視リポート (角川ホラー文庫)

事故物件7日間監視リポート (角川ホラー文庫)

  • 作者:岩城 裕明
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: Kindle版

「いやいや、それはない」おれはリビングの隅に設置されたカメラを見る。「映像に残ってるから。優馬だって確認したろ?」

優馬は瞬きをする。「え、映像に残ってると夢じゃないんですか?」

「映像に残ってるなら、それはもう現実だろ」

リサーチ業を営む穂柄は,不動産企業に勤める友人から,とある心理的瑕疵物件の調査を依頼される.909号室で7年前に妊婦が自殺したそのマンションは,その後同じ階の住人たちが退去し始め,現在ではその階だけが無人となっているのだという.穂柄は助手の大学生を伴い,定点カメラを設置しての一週間の泊まり込み調査を行う.

妊婦が割腹自殺した部屋を観察する一週間.次々に起こる不気味な現象と,だんだんと明らかになる事態,そして後味の悪さを煮詰めたようなラストへ…….読みやすく親しみやすい語りと,本自体の薄さ(約170ページ)に乗せられて,するすると地獄へ導かれていく.地獄への道は読みやすさで舗装されている,みたいな.デビュー作から読んでいるけれど,リーダビリティはいちばん高いのではないかしら.楽しゅうございました.

鴨志田一 『青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない』 (電撃文庫)

青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (電撃文庫)

青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない (電撃文庫)

  • 作者:鴨志田 一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫

今のご時世に至っては、他人の気持ちや気分がスマホひとつで無差別に飛んでくる。見ようとしなくても情報は世の中に溢れているし、無意識に何かに影響されていく。

知りたくなかったことでも、見たくなかったことでも、知ってしまって、見てしまったあとでは手遅れだ。

もう知らなかった自分に戻ることはできない。

知ってしまった自分が今の自分だから。

その自分と付き合っていくしかないのだ。

梓川咲太たちが大学生になって半年.同じ大学に通うアイドルグループ「スイートバレット」のリーダー,広川卯月の様子がおかしい.いつもド天然で,空気を読めない卯月が周りの空気を読んでいる.それは,久しぶりに聞く思春期症候群だった.

大学生になっても思春期は終わらない.前の巻から約一年半.受験生編や卒業編をあっさりとスルーして始まった大学生編(あとで回収する可能性は高いけど).空気を読めなかった少女が,空気を読めるようになって,強さと弱さを手に入れる話,みたいな.実に青臭く,それでいて現代的な,よい青春ものだと思う.今回は環境の変化や一年半の新たな出会いを描いたプロローグという趣が強かったかな.引き続き楽しみにしてます.

二月公 『声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない?』 (電撃文庫)

声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? (電撃文庫)

声優ラジオのウラオモテ #01 夕陽とやすみは隠しきれない? (電撃文庫)

  • 作者:二月 公
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: 文庫

おかしな話だ。

作品に声を吹き込むことに憧れたのに、要求されるのは声以外のコトばかり。

そこに全く疑問がないわけではない。

歌種やすみ(芸名)こと佐藤由美子は駆け出しの新人声優.学校では芸能活動のことを隠し,ギャルとして通っていた.そんなある日,同じ高校生声優の夕暮夕陽とラジオをすることになる.夕暮夕陽は同じクラスの地味な女子,渡辺千佳だった.

同じクラスで同じ職業,それなのに学校では接点がなくてそりも合わない正反対のふたりは,ラジオは理想のクラスメイトを演じることになる.新人女性声優の百合営業小説という,ピンポイントなテーマで大賞を獲った第26回電撃小説大賞・大賞受賞作.ギャルと地味女子,芽の出ない駆け出しと人気出はじめ.人気,実力,コネ,アイドル売りにセット売り.声優という仕事へのスタンス.いっしょの仕事を通じてクラスメイトでありライバルでもあるふたりの考えと関係は変化してゆく.

スポ根ものようなふたりのライバル関係と友情,そして職業人としての冷静なプロ意識が入り混じったストーリーは読んでいて小気味良い.アイドルものとスポ根の相性がいいのは今では周知の通りだけど,スピード感がかなり早いのはいかにも現代的だと思う.幕間のストーカーやらネット炎上のくだりは唐突感があったけど,これもまあ現代的ではあるのかな.良かったと思います.