「うん」と
幽鬼 は言う。「協力してもらってるからね。約束するよ」あっさりとした答えであった。
しかし、
幽鬼 にとっての約束は、命よりも重い。
けじめ。幻影との戦いに勝ち、髪を切ったことをそう表現した
ボロアパートの生活に夜間学校、街を支配する不良チームの抗争。珍しくゲーム外の出来事だけで構成された第七巻。今回はギャング小説というかヤンキー小説というか、五巻六巻ともまた違ったにおいがあった。不良たちの抗争に、冷めた視線を持ちつつも律儀で義理堅い部外者の
「うん」と
幽鬼 は言う。「協力してもらってるからね。約束するよ」あっさりとした答えであった。
しかし、
幽鬼 にとっての約束は、命よりも重い。
けじめ。幻影との戦いに勝ち、髪を切ったことをそう表現した
ボロアパートの生活に夜間学校、街を支配する不良チームの抗争。珍しくゲーム外の出来事だけで構成された第七巻。今回はギャング小説というかヤンキー小説というか、五巻六巻ともまた違ったにおいがあった。不良たちの抗争に、冷めた視線を持ちつつも律儀で義理堅い部外者の
「母親とも呼びたくねぇ、こんな奴」――吐き捨てるような言葉とともに、棺は炎に包まれた。
春も近い3月の京都。撫子とアマナは、撫子の従姉妹を名乗る少女、獄門杓奈に襲われる。獄門家当主の座を狙う杓奈は、パートナーの菊理塚みまかとともに本気で撫子を殺そうとしていた。ふたりの因縁と決着は、春の彼岸、大江山大鬼斎で付けられる。
「別段おかしいことでもないでしょう。お父さんだった人も、お兄さんだった人も、お姉さんだった人も――全員、お母様や私よりずっとずっと弱かったんですもの」
「……家族、だったんでしょう?」
「弱いやつなら家族でも淘汰される――それが獄門家です。弱いのは、喰われるだけ」
「……正気で言っているの?」
酒呑童子を慰撫する宴、大江山大鬼斎。現代の鬼の末裔が全国から集まるこの場で、ある儀式が執り行われようとしていた。血と愛憎に塗れた獄門家に生まれ、花の名前を冠したふたりの少女はここで殺し合う。二巻もそうだけど、その時点で書けることを出し惜しみすることなく、全部披露している印象がある。密度があってゴージャス、でも詰め込みすぎてちょっと読みにくいところもある、という。どう足掻いても幸福になれると思えない「鬼」の宿命はどう転がるのか。見守っていきたい所存です。
「いいわ……っ! 最低に見苦しくて……あなた最高。でも――私を悪者にするのは……」
囁くように、低く低く先輩は声を出した。
「――死んでも許さないから」
園芸部所属、蛇谷カンナ、行動原理は「嫉妬」。あらゆるものに嫉妬を向け、好きなものより嫌いなもので自分を語る。そんな彼女の趣味は犯人――つまり、いくら叩いても構わない「悪者」のいる、謎を解くこと。
第18回小学館ライトノベル大賞優秀賞。黙っていれば美人なのに口を開けば「妬ましい」しか言わない蛇谷カンナ先輩と、考えていることが全部顔に出る僕の「学園青春"探偵"小説」。日常の謎をメインにした、コミカルなキャラクター小説のノリではあるけど、明確な「悪者」を求めているのが異色と言えるかな。蛇谷先輩はなぜ嫉妬するのか、なぜ悪を叩くことに固執するのか。わかりやすい悪者を叩けば何かが解決するのか。蛇谷先輩がとてもいいキャラをしてると思うので、最近の流行りを見るに、メディアミックスされれば話題になりそう。続きとメディアミックス展開を待っています。
噂は消え、変わるところは変わり、変わらないところは変わらず。エモいことを見つけられていないのに、僕らの日常は歪むだけ歪み、摩耗し、そして消費されている。
高校生の柊透葉は、クラスメイトの暁月杏の「エモ探し」に協力していた。深夜のプールに忍び込んでみたり、夕焼けに照らされた教室でたそがれてみたり。暁月にはふたつの秘密があった。ひとつは彼女が中学卒業まで生きられないと余命宣告されていたこと。もうひとつは、「エモさ」を「寿命」に変えて生きていること。
宣告された余命を伸ばすため、ふたりの高校生は世間で「エモい」とされるものを探し求める。「エモい」という、曖昧で軽くていろいろな意味を内包して、決まった定義はなく簡単に意味の変わる言葉。それに真摯に向き合い、考えぬいて書かれた小説だと思う。「エモい」の理解と使い方は随一だと思う。見つけては喰い尽くされ、命と引換えに空虚なものになっていく「エモさ」には、デビュー作と同様、終わりと破滅のにおいが強く漂う。とても良い青春小説でした。デビュー作も好きだったので、併せて読まれてほしいな。
「ねえ柊くん、結局、エモいってなんなんだろうね」
木の幹の中程で、暁月がそう話しかけてくる。
「やっぱりさ、前まではもっとシンプルだったはずなんだ。世界があって、わたしがいて、綺麗なものとか目新しいものに言語化できないような意味を見出して。それで、エモいって思えていたはずなんだ。なんの疑問もなくエモいって言えてたはずなんだよ」
暁月の声には後悔も落胆もなく、ただ純粋な疑問だけがあった。
「わたしたちを取り巻く環境は、いつから変わっちゃったんだろうね」
「侵略的外来呪タニファ。報告にあった通りでした。不忍池の霊的異変の元凶です。河童を捕食して増えていたことは想定外でしたけど」
古来から存在する「在来呪(しゅ)」を喰い荒らす、海外由来の超常的存在「外来呪」に、神態系は乱されつつあった。そんな外来呪に対処する霊能力者集団である神代寮の新人、神坐火花降は、仕事の最中にひとりの男に出会う。
『オマエ……ナンダ?』
「山田厄雲。人間だよ」
――嘘ツキ。
怪人はそう思った。
呪いのために外せない仮面を付け、金も仕事も失うものもないけど不死身の強さを持つ、文字通りの「無敵の人」、山田厄雲。個性的な霊能力者チームの神代寮は、いかにもワケアリなヤクモとともに、侵略的外来呪に立ち向かう。令和の少年ジャンプの雰囲気(有り体に言うと『チェンソーマン』とか)があるアクション怪奇譚。明快ですっきりしたテキストのおかげか、ビジュアルやアクションがすっと想像できる。そういう意味でも少年漫画的と言えるか。「ダンチの怪」はわかりやすかった(舞台が東京郊外の「アークハム団地」)けど、それ以外の話も元ネタがあるんだろか。明快で軽快で楽しいアクション小説でした。