蒸気帝国、
流空剣術近衛派 、伝承の奥義。水が熱されて煙になる様に、人でありながら別の次元へ至る剣。
この世の全てから逃れ出て、この世の全てを断ち切る、蒸気の剣。
騎士団から逃げるため、クロニカを救うため、詐欺師のライナス=クルーガーは海の向こうを目指していた。双子の刺客に襲われたライナスとクロニカは、在共和国の蒸気帝国大使館に逃げ込み、
詐欺師と貴族は十二年前の革命から逃れ旅に出る。シリーズ第二巻。大英帝国とインドのよくないところをあわせたような
戦争と革命が終わり、人ではないものによる
蒸気帝国、
流空剣術近衛派 、伝承の奥義。水が熱されて煙になる様に、人でありながら別の次元へ至る剣。
この世の全てから逃れ出て、この世の全てを断ち切る、蒸気の剣。
騎士団から逃げるため、クロニカを救うため、詐欺師のライナス=クルーガーは海の向こうを目指していた。双子の刺客に襲われたライナスとクロニカは、在共和国の蒸気帝国大使館に逃げ込み、
詐欺師と貴族は十二年前の革命から逃れ旅に出る。シリーズ第二巻。大英帝国とインドのよくないところをあわせたような
戦争と革命が終わり、人ではないものによる
「どうして僕らだけ……」自分の声が聞こえてから、呻いたことを自覚した。「どうして
子供 だけが、こんなふうに扱われるんだろう」
アフリカ大陸、リベリアとシエラレオネの国境付近。七歳の少年、カラマは、村を燃やし、家族を殺したゲリラに拉致される。否応なしにゲリラの仲間にされ、カラシニコフを手にしたカラマは、子供兵士として虐殺と搾取と流転の世界に生きることになる。
その時々の自分勝手な大人に、国家に、世界の都合に。子供たちは生き方、考え方、体の発育までコントロールされる。ときに子供兵士、ときに天使として大人たちに扱われ、理不尽に転変する子供の価値観を、アフリカを舞台に描いてゆく。現実と地続きの物語ではあるけれど、SFの手法だからこそ許される描き方かもしれない。終章の最後の一行がこれほど重く感じられる小説はないと思う。最後の最後に示されたのは希望だったのか。とても良かったです。
「僕らの世界を創ろう」カラシニコフを掲げて宣言する。「子供と天使だけでも生きていける世界にするんだ。銃もダイヤもある。僕らはきっと、もう少し、マトモに生きられる」
そうだろ? と誰にともなく問うた僕の足下で、血に沈んだダイヤモンドが瞬いた。きっと
可能性 ってやつが同意してくれたんだ。そんな気がした。
「いいですか、間もなくおかとときがこの屋敷にやって来ます。この先どんなことが起きても、絶対に声をあげてはいけません。おかとときの興を殺ぐことだけは絶対にしてはなりません。わたくしの隣で毅然としていてください。よござんすね」
明治時代も終わりの頃。病死した父の商売を継ぐため、東京から金沢にひとりの少女がやってくる。二代目「竜胆」を襲名した少女は、「おかととき」という怪異を夜な夜な「遊び」でもてなすことを求められる。
第30回電撃小説大賞大賞受賞作。おかとときとは何者なのか? 父は娘にも知らせずなぜこのような商売をしていたのか? 明治末期の陰惨なホラーファンタジー。何らかの仕掛けが施されていることは読んでいてすぐに気づくはず。よくある……いや、ミステリでもホラーでもかえってあまり無い仕掛けなのかな? 容赦のない、静かで美しい描写があまりに心を抉ってくれる。しかし、内容に触れずに語るのが難しい。帯に曰く「物語は、三度、進化する」。騙されたと思って読んでみるといい。
ここで、ある作家は考えた。
――自由を侵害する暴力を止めるには、それ以上に苛烈な暴力で挑むより方途なし。
作家の名は夏目金之助という。
西暦1906年。政府の言論弾圧や社会主義者の暴力に立ち向かうべく、夏目漱石は自由主義を掲げて武装組織・木曜会を設立する。1910年、伊豆修善寺の旅館で漱石は小銃擲弾によって爆殺される。目を覚ました漱石は、冷凍保存されていたかつての許嫁、樋口一葉の死体に脳移植されていた。
「ま、まさか、私の穴という穴にバナナを詰め込んで、一晩熟成させる気ですか。
「俺を与謝野夫婦と一緒にするな」
「乙女の官能の熱で熟成させたバナナは愛の味がしたとかいうレビューを、雑誌に載せて世間様に公表する気なんですね!?」
「俺を与謝野夫婦と一緒にするな!」
明治時代のオールスターがそれぞれの目的を持って入り乱れる、第36回ファンタジア大賞大賞受賞作。虚と実が入り交じり、その境を曖昧にしてゆく語りは、間違いのない「本物」だった。夏目漱石(反政府武装組織首魁にして女体化)、森鴎外、野口英世、藤田五郎、芥川龍之介、寺田寅彦などなど、明治オールスターだけあって全員頭が良く、変に理屈をひねらずとも珍奇な話がすっと通じるのも良い。幕間に「史実」「虚構」タグ付きの解説がついているのが優しい(かえって混乱を誘っている可能性もありそうなんだけど)。まれにみる怪作であり、傑作であったと思います。
「もしかしたら……正しく生きることなんて、なんの意味もなかったのかなぁ」
世界を呪うような言葉は、濡れた肉の塊がびたんと床に張り付くように、醜く落ちた。
大阪旅行は思いがけない形で終わった。その後、日南とほとんど話すことができないまま、友崎たちは三年生に進学した。特進クラスと普通クラスに別れ、ますます日南と接触の機会が減ってしまった友崎は、思い切って日南の家を訪ねる。そこで友崎は日南の妹に会う。
「小説を書くっていうことは――
本当に人の気持ちよりも、優先するべきことですか?」
日南の仮面の裏側にあったもの、それを他人が「物語」として書こうとすること。人生から「理由」と「言葉」を取り除いたら、残ったのは「空っぽ」だけだった。じゃあ生きていくための「理由」と「言葉」はどこから生まれるのか。前巻の、ひいてはシリーズそのものを通して積み上げてきたものを完全に裏返してくれた11巻。読み終わった瞬間、うまく言葉が出なくてうわーっとなった。素晴らしい。ラストも近くなり、魔王日南の核心に迫りつつあると思われる。本当、楽しみです。