「誰も新たに傷ついてはいない」
と虐殺の作成者たちは嘯く。
「誰も新たに虐殺されてはいない」
と嘯く。
死者たちはそれ以上死ぬことはなく、苦しむことはないと信じて疑わない。
曽祖父のノートに遺された八つの■に包含された文字列、「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」。作中作? の「紐虫をめぐる奇妙な性質」が好き。とり・みきの絵で再生された。
表題作だけどいちばん難解だった気がする「ムーンシャイン」。とにかく大きい数が出てくる。
ライセンス型信仰集団の誕生と変遷を描く「遍歴」。要は現実をどう認識して共有するか、というだけの話だと思うのだけど、技術者倫理で組み上げられたオープンソース宗教の、妙な真面目さが楽しい。
エクサバイトを超える大量の「わたしのローラ」の生成画像、それに添えられたテキストファイル、「ローラのオリジナル」。世の状況は発表された2024年からあまり変わっていないのかもしれない。画像生成AIの学習を、機械が抱えることになった原罪と呼ぶ……。
2008年から2023年に発表された四つの短編と、それらを振り返るあとがきからなる作品集。ほぼあとがきのせいだと思うけど、集大成感があった。




