思うに〈青春〉というのは、よくできた推理小説のようなものである。
その渦中にある当事者からしてみれば、自分が何を経験しているのかすらよく分からない。
すべてが終わって、取り返しがつかなくなってようやく、全体像が見えてくる。
。あのころの俺たちは馬鹿だったなあ、でもあれが楽しかったんだよなあ、なんてことを言いながら振り返って、人は初めて明確にそれを〈青春〉と認識できるのだ。
まるで頭脳明晰な名探偵がそばにいて、理路整然と推理を展開してくれるかのように。
高校一年の春。綱長井高校に入学した出田樟は、同じクラスになった岩間理桜と出会う。中学時代は化学部だった出田と、科学部だった岩間はすぐに意気投合する。部活への新歓が解禁され、出田は化学部への入部を希望する。理数教育に力を入れていた綱長井高校にはもともと理系の部活が五つ存在し、五つ合わせて「理学部」と呼ばれていたが、今では三つしか現存していなかった。
〈青春〉を解き明かす、青春学園ミステリの開幕。理系の部活にフォーカスした学園もの、しかもミステリで、生物部が主役になるのは珍しい気がする(他の部もおおいに絡んでくると思うが)。いかにもキャラクター化された理系の高校生たちに、理系ってこんなだっけ……? と思わなくもないけど、「今」、「学園もの」でないと出来ない青春小説に果敢に挑戦している感があった。計画的犯罪ならぬ計画的青春というのかな。続きがとても楽しみになりました。