赤城大空 『出会ってひと突きで絶頂除霊! 4』 (ガガガ文庫)

出会ってひと突きで絶頂除霊! (4) (ガガガ文庫)

出会ってひと突きで絶頂除霊! (4) (ガガガ文庫)

『セックスしないと出られない部屋』

晴久の腕に取り憑いている謎の少女,ミホト.魔族も圧倒するその力を危惧した退魔師協会は,十二師天に処遇を一任する.美咲が持つ宗谷の血の力で,晴久の絶頂除霊(テクノブレイカー)の力を制御することができなければ,晴久は処分されてしまう.試練を受けることを決めたふたりは,いきなり「セックスしないと出られない部屋」に閉じ込められてしまう.

主人公とヒロインがセックスしないと出られない部屋に閉じ込められるという,ライトノベルにあるまじき直球のピンチが描かれる.肌色多めの退魔伝奇アクション第四巻.退魔師協会の十二師天.天から降りてきた神と同居する天人降ろし.性欲を霊力に変換する媒体である人式神.悪霊を取り憑かせたラブドールの大群.霊体に強い偏愛を抱くゴーストフィリア.エロとシモは多めだけど,これが読んでみるとしっかり伝奇小説をやっている.それどころか,伝奇アクションとエロスが濃密に結びついていて,不可分になっている印象まである.ひょっとして山田風太郎の後継者のひとりなのではなかろうかと.巻を追って面白くなっているし,あらすじを読んで抵抗がなければ今から追いかけてみるのもいいのではないでしょうか.引き続き楽しみにしております.

有丈ほえる 『救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由2』 (講談社ラノベ文庫)

救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由2 (講談社ラノベ文庫)

救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由2 (講談社ラノベ文庫)

「文明が滅んでしまった理由を知りたいのです。そうして、一つの問いに答えを見出したい――果たして、あらゆる文明は滅びを前提として生まれるのか? もし、そうじゃないのなら、不滅の文明に必要な条件とはなんなのか――」

人造人間リュトと行動をともにする考古学者のニナ,アイルは,アカデミーの依頼を受けて,千年前に行方をくらました伝説の英雄,サイトバル将軍の足跡を追うことになる.将軍が眠ると目される古戦場に向かった一行は,そこで遭遇した発掘村をベースに発掘を行うことになる.

千年前に失踪した英雄の真実,そして現代まで生きていた千年前の陰謀とは.2ヶ月連続刊行の2巻.あとがきで「三巻の刊行が未定のため,三巻が出るのであれば一番面白くなるプロットを書いた」とぶっちゃけており,なるほどあちこちに未回収の伏線がばらまかれていることが見て取れる.物語自体は悪くないと思うのだけど,話作りは悪い意味でスケールを感じない.せっかく人間に変わって外来知性体(宇宙人)が地球の霊長になったというのに,やっていることは同類同士でのケチくさい権力争いばかりだし,言葉は日本語(と明記されている)だし.続きが気にならないわけではないけど,このままだとストレスのほうが強い.この設定ならもっと面白い話ができそうなのに,もったいないなあと.



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海津ゆたか 『NGな彼女。は推せますか?』 (ガガガ文庫)

NGな彼女。は推せますか? (ガガガ文庫)

NGな彼女。は推せますか? (ガガガ文庫)

「……絶対に諦めないぞ。俺は証明するんだ。アイドルは世界を変えられるって」

アイドルを愛しアイドルを信じる男,中嶋拓人は,高校の合格発表で出会った少女を理想のアイドルにすることを決意する.青春に飢える地味少女,滝沢一花をプロデュースするべく,音痴なパンクロッカー,中二病のファッションデザイナー,元ドルオタが集結する.

学園都市を舞台にした,プロデューサーとスタッフとアイドルの物語.アイドルはきっと世界を変えられる,というテーマはオーソドックスなものだと思うんだけど,動機づけや舞台となる学園の設定に強引な印象が強い.というより蛇足が多いかなあ.ポイント制や特殊な学園都市がストーリーを面白くしているようには見えず,ストレスになっている部分のほうが強かったような.

子安秀明 『探偵オペラ ミルキィホームズ ~overture~』 (電撃文庫)

探偵オペラ ミルキィホームズ ?overture? (電撃文庫)

探偵オペラ ミルキィホームズ ?overture? (電撃文庫)

「あたしの初めて解いた――“謎”なんです」

当時アニメが放送中だったミルキィホームズのノベライズ.ミルキィホームズ結成前夜の四人の出会いをそれぞれの視点から描く.だいぶシリアス寄りで,直接の前日譚ってわけではなさそう.アニメの初期しか知らないので,話に身があるしちゃんとミステリっぽいのが不思議に感じられた.単なるファンアイテムで終わらない小説になっていて,良かったと思います.

紙城境介 『継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない』 (スニーカー文庫)

継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

継母の連れ子が元カノだった 昔の恋が終わってくれない (角川スニーカー文庫)

さて。……言うまでもなく、これは崩壊の序章である。

というか、中学生の愛の告白が崩壊の序章でない確率なんて、たぶん五パーセントを下回るだろう――中学生カップルが一生を添い遂げるなんてこと、現実的に考えれば、そうそうあるわけがない。

なのに、当時の僕たちは、あるわけがあると思っていたのだ。

中学生だった伊理戸水斗と綾井結女は恋人同士だった.それから半年.卒業を機に別れることになったふたりだったが,水斗の父と結女の母の再婚により,意図せずひとつ屋根の下で暮らすことになってしまう.

第3回カクヨムWeb小説コンテスト・ラブコメ部門大賞受賞作.「実際リアルでこの状況になったら地獄だと思います」と作者ものたまうシチュエーションを,ふたりの語りで交互に描く.ストーリーや舞台に「京都」や読書,とりわけ「ミステリ」をねじ込んでいく自己主張の強さがいかにも京都の作家らしいがそれはさておき.

あまあまな中学生活を送っていたふたりが,些細なことから互いに大嫌いになって別れるまでの流れといい,否応なしにきょうだいになって両親に黙ったままぎすぎすするくだりといい,中学生なりに盲目的に燃え上がった恋愛を,別れたあとの冷めた目で見直す羽目になることといい.当事者からしたら本当に「地獄」であろうシチュエーションを,第三者(読者)視点から見たときの面白さよ.他人の不幸は蜜の味みたいなゲスい気持ちと,なんだかんだと互いを気にせずにいられない,中高生らしい恋愛心理のかわいらしさを微笑ましく見る気持ちが良いバランスで浮き上がってくる.うまくて楽しいラブコメでありました.続きも楽しみに待っております.



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