牧野修 『月光とアムネジア』 (ハヤカワ文庫JA)

月光とアムネジア (ハヤカワ文庫JA)

月光とアムネジア (ハヤカワ文庫JA)

牧野修一流の言語感覚が楽しい.「ゆずす飯」「窯変の会」「狽」といった独特の用語・ガジェットが,単なることば遊びに留まらず,世界観そのものをがっちり形成している.世界の中に小道具を配置するのではなく,小道具を積み重ねることで世界を作っている感じ.なので,読みながら視点の拠り所となるような足場が見つからず,非常に気味が悪かった.もちろん誉め言葉.そんな奇妙な世界により,<レーテ> や月光夜といった物語の謎や,3時間ごとに記憶がリセットされる不安がより一層掻き立てられる相乗効果.流石に上手いなあ.私にとっては『傀儡后』以来の牧野修になるかな.楽しかった.