ロバート・J・ソウヤー/内田昌之訳 『ゴールデン・フリース』 (ハヤカワ文庫SF)

ゴールデン・フリース (ハヤカワ文庫SF)

ゴールデン・フリース (ハヤカワ文庫SF)

47光年の彼方を目指す巨大宇宙船で一人の女性科学者が死亡した.犯人は,感情を持った人工知能(冒頭で明かされるのでネタバレにはならないだろう).
物語は殺人犯であり,また船のすべてを制御する人工知能“イアソン”の視点から語られる.ジャンルでいうとSFミステリかな.普段ミステリをあまり読まない身からするとこの立ち位置はとても面白い(倒叙というらしいですね).
いわば神の立場にいる(しかも人工知能)癖に意外と粗忽者で,謀略をめぐらせつつも被害者の元恋人に追い詰められていくイアソンはなんかかわいい.よくある四角四面な書かれ方をしてないのが新鮮.
イアソンと元恋人が「真実」について議論を戦わせるクライマックス,そして思わせぶりなラストには感慨深いものがあった.
SFを読まない方でも比較的読みやすいと思うのでミステリファンの方もどうぞ.