長谷川昌史 『ひかりのまち nerim's note』 (電撃文庫)

ひかりのまち―nerim’s note (電撃文庫)

ひかりのまち―nerim’s note (電撃文庫)

第11回電撃小説大賞金賞受賞作.どこぞの国のファンタジー*1
一見して台詞のやり取りが多い.特にクライマックスに入ってからはほとんど台詞だけで構成されているように見えた.あとがきで
「とにかく徹底して議論=対話(ダイアログ)を活用して登場人物の葛藤を描いた」
とあるように,意図していることは理解できる.ただしそれは諸刃の剣.台詞に比して状況説明・心理描写が少なくなってしまっている.主人公たちが「噛み合わない議論」を戦わせているその傍らで,周りの人物がどういう状況にあり,何を考えているのかがわかりにくく,結果として最も盛り上がるべき場面での緊張感が弱いものになってしまっていた.世界観がわかりにくかった(「科学的世界」なのか「魔法世界」なのか)のも緊迫感が足りなかった原因のひとつかな.
文章は綺麗だし技術は間違いなくあると思うんだけどこの作品では微妙に空回りしている気がした.

*1:我ながらひでぇあらすじの略し方