御伽枕 『天使のレシピ』 (電撃文庫)

天使のレシピ (電撃文庫)

天使のレシピ (電撃文庫)

第12回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作.プロローグとエピローグを含めて全6篇の短編からなる連作短編集.
素直に読めば(文体から設定からすべてが)こっ恥ずかしい青春もの.なんだけど,私は読んでてちょっと解釈に困った.
特に「超告白」と「トランキライザーキス」.恋愛感情や関係が何かおかしかったり歪んでいたり問題があったりする.本人たちは悩んだり苦しんだりするけど解決はしない.エピソードの終わりのほう,原因は「心を落としていたから」の一言で片付けられて,でもって天使がちょっと手を貸したらすべてが丸く収まって,という.悪いのはすべて外的要因であって本人たちにはなんの落ち度も無く,その代わり,自分で努力しても意味無いんだよ.みたいなメッセージが込められてるのかなと私には思えた.
まあ私が誤読している可能性はかなりでかいと思う.でも普通の青春ものとして若き日の葛藤がうんちゃらかんちゃらといくらでも書けそうなものを,「天使」という安易な解決策に落とし込んで単純化しているのはかなり気になった.そもそも天使の設定が話の本筋から浮いている気がしてなんとなく苦しげだし.
天使がまったく絡まない(本のテーマ的にはそれはどうかとも思ったけど)「恋愛実験」はとてもよかったと思うので,なんつーか,設定選択のミス? のようにも見えた.レーベルを考えればこれで正解なのかなぁ.
雰囲気は決して嫌いじゃないのでできればこれとは別のテーマの作品を読んでみたいカモカモ.