森橋ビンゴ 『pulp II』 (ファミ通文庫)

pulpII (ファミ通文庫)

pulpII (ファミ通文庫)

どこのVシネか台湾映画かと見紛う,すっごいB級の空気が始終漂っていてそれがまず面白い.「時計仕掛けのりんご」みたいな終盤のくだりのアホな設定も,これまたわかってる感じで良かった.
どこかでみたような,パッと見で安っぽい話のつくりをしているのに,次の展開が読めないというのはこれいかに.伏線の張り方や転章の使い方をみても,しっかり構成を考えた上で描かれているのがよくわかる.同じB級とはいえ,例えば低予算映画から感じられるチープさのようなものはまったくない.表現したいものがあるから低俗にした,みたいな,ベタで曖昧な書き方をするなら,芯が一本通っている印象を受けた.作者自身はあとがきで「暗い話ですが」と書いているけど,なかなかどうして,熱い話じゃありませんか.完結編が,これまたどうなるのかぜんぜん読めなくて,すごく楽しみ.