田口仙年堂 『吉永さん家のガーゴイル』 (ファミ通文庫)

肝心なところ(と私は思う)の描写が言葉少なめであっさりしてたり,技術的には粗が目立つ.まあこれは私がさきに『コッペとBB団』を読んでいるせいかもしれないけど.でも不思議とそのへんは気にならなかった.むしろ家族の優しさとかご町内の暖かさだとか,作者の描きたかった生のメッセージみたいなものがダイレクトに伝わってくるようですごく感触が良い.声高に「素晴らしい」と叫ぶのではなく,ひとり静かに「良いなぁ」と溜息を吐きながら楽しむような,私にとってはある種別格の作品かもしれないと思った次第.