深見真 『疾走する思春期のパラベラム』 (ファミ通文庫)

疾走する思春期のパラベラム (ファミ通文庫)

疾走する思春期のパラベラム (ファミ通文庫)

まあなんだ,軽薄な話だと理解しているつもりではあるしざっと検索した感じでは酷評が多いっぽいけど,私には下半期に入っていきなりのヒットだった.
物語的には『スクライド』(どっちかというとアニメ版)を思わせるような学園異能で,他愛ない話.全員が何らかのトラウマを抱えていて,ってのはありがちではあるんだけど,なんつーか,その描き方がオープンな感じがして,思春期をテーマにした小説にありがちな根の暗さが無い.物語全体をどこかネアカな空気が取り囲んでいた.そのネアカさと「殺意や闘志を銃器の形で物質化できる」という,少年マンガ的なある意味脳天気な超常能力とアクションが組み合わされば,そりゃ燃える.端的に言うとカッケェ.文体も好みだったこともあって,読む手が止まらなかった.カッケェ,カッケェと(心で)叫びながら読みましたよ.ヒロインが VIPPER なことには何の意味も無いんだろうなあ.
あとに残るものは何も無い中二病小説かもしれないけど,何かを衒ったりすることなく心から楽しかったといえる小説も久しぶりのこと.私には最上級の娯楽小説だったのでした.続編にちょう期待してます.