『カルタグラ〜魂ノ苦悩〜限定版』 (キッド)

カルタグラ ~魂ノ苦悩~(初回限定版)

カルタグラ ~魂ノ苦悩~(初回限定版)

トゥルーエンド踏破.

七七「さあ行こう、秋五。この歪んだ愛の物語に、止めをさそうじゃないか」
d:id:kanadai:20061006#1160152637 を受けてのこの台詞,結論から言うと期待は裏切られなかった.
戦後6年目の猟奇殺人事件……ということでジャンルはミステリ.トリックは比較的わかりやすいものだったけど,「歪んだ愛ゆえの狂気」をテーマに,非常に丁寧に描かれている.ミステリではあるんだけど,主人公が探偵役ではなく,真相から遠くで完全に振り回される役にまわるのも新鮮だった(私がミステリを読み慣れていないせいだろうけど).この探偵役の妹,高城七七のキャラ作りが面白い.全てを見通す洞察力を持ち神出鬼没で万能,それでいて倫理観ゼロ(好奇心のためなら殺人幇助も厭わない)のトリックスターシナリオライター西尾維新の影響を強く受けているのは間違いない.時代考証が(たぶん故意に)曖昧にされていたのが気にはなったけど,ヒロインたちも魅力的で,演出・BGMの良さもあって,最後まで惹き込まれた.エロゲにしておくのは正直勿体無い.
ただ,従来の「フラグを立ててキャラクター攻略する」タイプの,つまりは複数の結末のあるエロゲと,真実はいつもひとつ! のミステリの組み合わせは食い合わせが悪いなあとしみじみ実感した.特定のキャラのルートに入ると事件の真相は謎のままラストを迎え,別のキャラとは例え仲良くなったとしても必ず殺される.真実を知るためには,メインヒロインを選ぶしかない,という選択肢の狭さが,ゲームには向いていないなあ,と.サブキャラクターも魅力的に感じたからそう思ったのかもしらんけど.すべてのルートを読むことを強制し,メインヒロインを置かない「ひぐらし」みたいな手法がノベルゲームの理想形だったのかもしらんとひとしきり唸った.