飛浩隆 『ラギッド・ガール 廃園の天使II』 (早川書房)

これは間違いなく傑作.『グラン・ヴァカンス』*1では描かれなかった,〈数値海岸〉を構成する要素(SF的設定という意味だけではなく)が内から外から明らかにされていく.パーツを組み立てて世界観を創るこの感覚は正しくSF的だと思うのだけど,単にそこに留まっていない.強烈なSFガジェットがこれでもかと頻出(似姿のアイデアには震えた)するのはもちろんのこと.人物(とAI)の情緒の細やかさ.どこかソリッドな〈多重現実〉や幻想的な〈区界〉のビジュアルイメージは目に鮮烈に浮かぶよう.とにかく素晴らしいのひとことでした.

*1:正直ディテールの記憶が曖昧なのですが…….文庫版買うしか?