野村美月 『"文学少女"と繋がれた愚者《フール》』 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

面白かった.ストーリーは超安定路線.導入からクライマックスまで,雄弁に語られる遠子先輩の薀蓄は物語の道具立てとしてはもちろん,それ以上に読んでいて楽しい.というか語るのが楽しいという空気が伝わってくるようですごく良い.
その一方で,心葉の心の闇や,遠子先輩や琴吹さんの過去にも徐々にスポットライトを当てて浮き彫りにしていく,その描き方も非常に丁寧.そしてエピローグで明かされる衝撃の事実.なんというか物語とキャラクターの絡め方が細やかで立体的だと感じた.惹き込まれた.
ということで堪能しました.続きが待ち遠しい.



あと蛇足で,感想じゃないけど引っかかったことがひとつ.ネタバレになりそうなんで伏字で.
芥川のモノローグの一人称に「俺」と「オレ」,2種類が使われているのは何か意図があったのかしら.母親に宛てた手紙では「俺」,××(二重のネタバレ防止)への手紙は「オレ」になっていた気がしたんで,トリックか伏線かと思ってざっと読み返してみたんだけど,結局よくわからなかった
感想サイトを軽く浚った感じでは触れてるひとはいなかったっぽいんですが,もしかして私なんか見落としてる?