- 作者: 藤野恵美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/02/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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……なんというダメな大人なのだろう.気弱で不器用で優柔不断,とにかくハルさんがあまりにダメ過ぎる.ただダメなだけならともかく,作中で20年ほどの時間が過ぎるのに特に自己を省みるでもなく,はらはらしながら娘を見守るだけでまったく成長も学習もする気配も無い.ダメ人間に自己投影して楽しむ物語は数多くあるけれど,途中から流石にうんざりしてしまった.
できるなら、あらゆる人付き合いを避けたいのが、ハルさんの性格だった。
謎解きも,見た目上死んだ奥さんが脳内から一方的に話しかけてくるだけで,まったく「推理」になっていないのもすごく気になった.せめて対話で謎を解き明かしている形を見せてくれないと,まるっきりハルさんが何もしてないようにしか見えない.ラストまでになんらかのどんでん返しか種明かしがあるのかと思ったら何も無し.もう少し違った書き方があったような気がしてならない.
まったく成長しないハルさんと幼稚園児の頃からしっかり者で逞しいふうちゃんとの対比で,子どもの成長というものを強く浮き彫りにしたかったのかな.とか思ったのだけれど,個人的には合わなかった.