『午前零時』 (新潮社)

豪華執筆陣による「午前零時」をテーマにした掌編アンソロジー集.といっても一冊以上を読んだことのある作家はひとりだけ(誰かは言わずもがな).あとは買ったまま積みっぱなしの作家がふたり,途中まで読んで放り投げたのひとり,東京に住んでいたころご近所さんだった作家がひとり.まあ読書の幅の狭いことよ.

鈴木光司 『ハンター』

スマートなショートショート.途中でオチが読めるけど綺麗なまとまり.

坂東眞砂子 『冷たい手』

女として,ひととして枯れていく恐怖が短い中で端的にまとめられていてすごく良かった.31 ページの「わたし」のビジョンにはぞっとさせられた.

朱川湊人 『夜、飛ぶもの』

子どもの頃の不思議体験を語る.理屈にまったく合わない話なのに妙に読後感が懐かしい.落ち着いた語りもさることながら「飛ぶもの」のチョイスも良かったのかな.子どもなら一度は憧れただろうものだし.

恩田陸 『卒業』

何したいのかよく分からん…….別作品のスピンオフ?

貫井徳郎 『分相応』

冴えない中年のパッとしない日常が痛いほど伝わってきた.はっきりしたオチを用意しないことで生まれた閉塞感が気持ち悪ぃ.つーかおっさん(=主人公「吉井」(2007.7.9 12:19追記))一発殴らせろ.

高野和明 『ゼロ』

SF 掌編.このアイデアどこかで見たような…….

岩井志麻子 『死神に名を贈られる午前零時』

夢も希望も無い現実その2.上手いことは上手いんだけど閉塞感も並じゃねぇ.辛いことの多い世の中,せめて小説の中では夢見たいエンジェル隊

近藤史恵 『箱の部屋』

話がどうこう以前に,こんな生活を続けてたらあっという間に破綻するんじゃないかとそっちが気になって仕方なかった.

馳星周 『午前零時のサラ』

男と女とゴールデン・リトリーバーの三角関係.これは良い.悲しい結末のはずなのにどこか救われるようなラストが素晴らしい.惜しむらくは尺の制約で三者の関係の変化が最低限しか描かれないこと.これは長編で読んでみたかった.

浅暮三文 『悪魔の背中』

ユーモラスな話運びとドキリとさせられるオチが楽しい,ショートショートのお手本のような話.悪魔の登場するショートショートは相当書かれているはずなのに,ネタは尽きないもんだなあ.

桜庭一樹 『1、2、3、悠久!』

桜庭一樹らしい,女と娘たちの話.ショートショートというには内容が詰まっている印象だけど,8ページしかない中で綺麗にまとまっていて寸詰まり感は無い.上手い.

仁木英之 『ラッキーストリング』

オチは秀逸.でもそこへ至るまで,たいしたページ数でも無いのにやけにだらだらしている印象を受けた.スマートさが足りない.

石田衣良 『真夜中の一秒後』

なんというオサレな掌編.人気が出るのはなんとなく分かったけど私には正直合わないわ.