ツカサ 『RIGHT×LIGHT 〜空っぽの手品師と半透明な飛行少女〜』 (ガガガ文庫)

第 1 回小学館ライトノベル大賞・期待賞受賞作.右手で握ったものを(本人の意思に関係なく)消してしまう "手品師" ケースケと,見た目どおり半透明の魔術師アリッサの異能ボーイミーツガール.
これは良かった.主人公の二人,ケースケとアリッサが良かった.軽妙でありながら芯を持った二人のキャラクターの描き方,そして掛け合いの暖かさが上手かった.おかげでプロローグで語られる事故ほか,ともすれば重くなりがちなエピソードを多く繋げて話をつくりながらも,物語そのものは重くなっていない.浮きすぎず沈みすぎず,一定の緊張感を最後まで保っていた.このバランス感覚は絶妙だと思う.
世界観のつくりや用語,「魔法」と「魔術」の定義の違いなど,どことなく奈須きのこを髣髴とさせる部分が多かったような.意識せず影響を受けているというよりリスペクトしてあえて取り入れていた印象.ケースケとアリッサの関係もシロウとセイバーにどことなく似ていた.でも奈須きのこに比べると良い意味で癖がなく,素直な文体で飲み込みやすかったかな.より広く浅く受け入れられる,かも.
ラノベのひとたちから敬して遠ざけられつつある(と勝手に私が思っている)ガガガ文庫の新人では当たりの部類だと思うよ.