夏海公司 『葉桜が来た夏』 (電撃文庫)

第 14 回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作.十字架状の移民船でやってきた女性だけで構成される異星人・アポストリ.琵琶湖に不時着した彼女たちは日本の科学技術を大きく発展させたが,その一方で国内・国家間には不穏な空気が漂っていた.
エロゲ一本分のシナリオを文庫一冊に噛み砕いて書いたような,無難な感じのボーイミーツガール.話自体は素直だったんだけどもの凄く気になった点がひとつ.「女性だけ」で構成される異星人の生殖に関する倫理観が地球人のそれとほぼ変わらない,ってのはあまりに詰めが甘いと思う.それでいて生殖の方法はセックスではなく○○.物語上の必然性が感じられず,レーベルに合わせたごまかし以外の何ものでも無いと思うんだけどなあ.そこをきっかけにしてほかにも突っ込もうと思えばもっと突っ込める点はあるけど,全体にご都合主義が漂う(それが悪いとは思わない)なか,その半端に入れた捻りがやたらと引っかかったのでした.