野村美月 『"文学少女"と神に臨む作家《ロマンシエ》 上』 (ファミ通文庫)

シリーズ最終編・上巻.
とにかく気持ち,心が見えない.ストーカーじみた不気味な行動を見せる流人はもちろん,主人公の心葉も含め,他の人物たちも誰ひとりとして本当の気持ちを明かしてはいない.誰が誰を想っているのか,ヒントは多く出されているものの,それを信じるとミスリードに誘われそうで却って信頼できない.文字通りの罠が仕掛けられていそうで読者の私としても踏み込めず,そもそも想いが交錯しているのかどうかすら怪しく感じられてしまうという.琴吹さんは心葉一途なのだろうけど,それだけに心揺らぐ心葉との甘いはずの時間も苦すぎて辛い.その苦さを知っているだけに,遠子先輩と心葉の過ごす(残り少ない?)時間も素直に飲み込むことが出来ない.
端的に感想を書くなら,心葉氏ね氏ねすぐ氏んじまえ,と.
伏せられた情報は多く,いずれにせよ下巻を読まないことにはなんとも言えない.発売がいつになるのか知らないけれど,表紙の遠子先輩やカラーイラストの琴吹さんの辛そうな表情が出来るだけ多くの笑顔に変わっていますように.