ジョン・クリストファー/中原尚哉訳 『トリポッド 3 潜入』 (ハヤカワ文庫SF)

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)

怒り狂っているうちはまだよかった。でもそのあとの顔は、ぼくには耐えられなかった。髭面をゆがめた、あの深い絶望の表情。思い出すといまでも気分が悪くなる。

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トリポッドに対抗するための情報を集めるべく,トリポッドたちの都市へ潜入するウィルたち.そこに暮らしていたのは異様な姿をした異星からの征服者たちだった.
倒すべき敵でありエイリアンであるところの「主人」たちの描き方が面白い.懐かしい感じのする旧き良き宇宙人たちはそれぞれに妙な人間臭さと個性を持つが,それと同時に理解しあうには決して越えることの出来ない溝も存在することが明示される.その描き方は乾いていて容赦が無い.
ハンスの島の出来事や次の 4 巻で描かれるように,「自由市民」同士でさえ溝を埋めるのは困難極まりない.けど絶対に無理なことではない.最終的にフリッツと和解できたことがそれを暗示していると思うのだけど,犠牲に対して手に入れられるものが少なすぎじゃね? たぶんネガティブに偏った感想なんだろうけど,私なんぞは小さな希望より大きなやるせなさに力が抜けてしまうわけですよ.