- 作者: 小柳粒男,長月みそか
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/06/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ひとりは魔女,ひとりは騎士として異世界との戦争に参加する三人の高校生たちに巻き込まれるのは 25 歳の冴えない店長・撒井.落ち着いて自分の判断でトンチキな出来事に関わりながらどこか当事者意識の薄い撒井の視点はオトナとしてのそれ.他のオトナより少しだけ理解がある,という違いはあるだろうけど.非日常とつかず離れずを保たれる距離は若さゆえの無駄の中を生きる三人と,それを終えて外から見つめるおっさんとのギャップにそのまま繋がっている.
女子高生で魔女の篠木はテキスト分量は少ないながら印象は強烈.篠木をほんのりと想いつつもこれといった行動はせず,地に足ついた現実を生きるうちに消えていく撒井の妄想.あとから振り返ればあったか無かったかもあやふやで,その後の人生に露ほどの影響も与えない常識的なオトナの思慕は,でもなぜかそんな悪い気はせず.ちと違うけど連想したのはこういう系統のやつとか,最近だと『ラバーズ7』の宗則となつきの関係とかな.1987 年生まれが書いたとは思えないえらく枯れた,おっさんじみた話であることよ.
冒頭の 2 ページからえらく癖の強い,有り体に言って中二病をこじらせたような文体でどうだろうと思ったのだけど徐々に慣れる.つまらない暇つぶしを「ニコ動」に喩えたり血みどろを雛見沢と呼んだり,文脈の中でさらりと使ってのけてるのは時代性かねえ.面白かったです.