くげよしゆき 『セルロイドヘヴン』 (ファミ通文庫)

セルロイドヘヴン (ファミ通文庫)

セルロイドヘヴン (ファミ通文庫)

向かい合うのは男と男,その手に持つのは銃とナイフ,二人の関係は父と息子."貴族の養子"になれば「天国」に行けると信じた捨て子のドルチェ.育ての親の御爺ことガウェインのもとを飛び出したその 5 年後,帰ってきたドルチェとガウェインの再会,そして 5 年間で変わったもの,変わらなかったもの.
いやー,面白かった.もろに好みのツボにはまっちゃったんでそのまま感情に任せて書くけどムチャクチャ面白かった.第一部はドルチェ,第二部はガウェインが主役の位置に据わって描かれる.マカロニ・ウェスタンをベースに敷いて分かりやすい欲と暴力と人情が支配する,ドライなようでウェットな世界観で繰り広げられる男と男の物語.第一部も良かったけど第二部のガウェインが老兵として父として何より男として格好良すぎた.ドルチェの役回りが(マカロニ・ウェスタンの様式に沿っているおかげで)一貫していないのが若干損をしている印象があったけど,エピローグの彼はこれまた格好良かった.
B 級で即物的だけど揺るがない自負を持ったキャラクターがいちいち格好良くて生き生きしていた.素敵な物語でした.