佐野しなの 『僕は彼女の9番目』 (電撃文庫)

僕は彼女の9番目 (電撃文庫)

僕は彼女の9番目 (電撃文庫)

「あっ、でも、関係ないって言われた事でもやもやするのなら、関係を作ればいいだけですねっ?」
にこらがぱっと笑顔になった。単純明快だけど確かにそうだ。関係ないって言われて嫌なら関係してきゃいいんだよ。そうだそうだ。目からうろこ。

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クリスマス・イブに何者かに轢き逃げされ,そのまま入院することになった高校生の東司.それから 2 ヵ月後の 2 月末,窓からやってきたのはミニスカサンタの娘さん.娘さん曰く,東司を轢いてしまったのは自分であり,お詫びとして何でも願いを叶えるという.
『リヴァースキス』の作者の二作目.赤い服を着た押しかけ女房もの.この手の話に於いても据え膳度(なんだそれ)はかなり高いものの,東司の「サンタアレルギー」のおかげでそっち方面へのアプローチはかなり穏やか.つうか強引に無風.窓から見知らぬ娘さんが侵入してきて「好きにしてください」というシチュエーションよりも「サンタアレルギー」の存在の方がずっと不自然なものに見えるのは作者の力量ゆえか,メディアに汚された私の目が腐っているのか.
短いセンテンスの台詞を改行せずに重ねることで生まれるテキストラインは,決して読みやすいものではないものの独特のリズムを持っている.一定のリズムに乗せてわりと重要で深刻なことをさらっと淡々と,でもニュアンスは損なわずに表現した終盤のやりとりは凄く良かったと思う.前提だけでなくストーリーそのものもご都合主義が強く,それほど強く推そうとは思わないけど,このテキストの調子で伸びていけばいずれとんでもなく化けるかも? 分かんないけどまあ過剰な期待はせずに見ていきたい,かな.