深山森 『ラジオガール・ウィズ・ジャミング』 (電撃文庫)

ラジオガール・ウィズ・ジャミング (電撃文庫 (1288))

ラジオガール・ウィズ・ジャミング (電撃文庫 (1288))

戦争が終結してから 10 年.あらゆるメディアが禁じられたとある国の西部の都市シムカベル.ここには夜な夜な街を駆け巡る怪人がいるという.その怪人との名は J・O・L 西部海賊放送局.
ある国境都市の戦後復興に起こった出来事を描いた物語.軍,官,民,テロリスト,そして海賊メディア.平和な復興を遂げつつある街におけるパワーバランスの描き方は過不足なく,ストーリーとのバランスが上手く取れていたと思う.夜の街を舞う怪人,それと屋根の上で対峙する帯刀した軍人など,いかにも「怪人」を扱った,絵になる構図が多いのも特徴かな.読み捨て上等のエンターテイメントとしては充分かと思うんだけど,例えば和気藹々とした住人たちが情報に踊らされ疑心暗鬼に陥る姿はもっと掘り下げられたはず.など,話がどこかへ偏るのをセーブしているきらいもあったような.シビアなテーマを選びながらも,よく言えば暖かい,意地悪く言うなら偽善的な話ではあると思う.そこをどうとるか,かな.発売当初の評判はかなり良かった記憶がある(うろ覚え)のだけど,実はひとを選ぶ話なのでは?