野村美月 『"文学少女"と神に臨む作家《ロマンシェ》 下』 (ファミ通文庫)

シリーズ完結.物語に残された最後のキー,"文学少女"を明らかにするグランドフィナーレ.ジッドの『狭き門』をモチーフとして重ねながら,謎めいた何かを抱える遠子先輩と,書くことを拒む心葉へプレッシャーを掛けながら自分も徐々に押しつぶされていく流人の生い立ちが,その二組の両親との二世代をかけて少しずつ明らかにされる.真実は想像した以上に生臭く,話運びは泥臭くて青臭い.それでいて静かに燃え上がりつつ収束に向かう物語には強く惹きつけられる.八章の心葉は上巻で描かれた「作家と読者の信頼関係」に対する作者なりの回答だよね.これまでの積もり積もったうだうだを一気に振り払う,シンプルで溢れるようなモノローグはグッときた.シリーズを盛り上げながら押し進め,ラストまできっちり描ききった作者に敬意と感謝を示したい.みたいな.琴吹さんは最後まで不憫な役回りだったけどね…….