- 作者: 倉阪鬼一郎
- 出版社/メーカー: 出版芸術社
- 発売日: 2007/12
- メディア: 単行本
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ページの大半はレース中の描写に割かれる.何かを決心して走る母親,母を気遣って伴走する陸上部員の息子,応援に回る父親と娘の互いが互いを思いやるユーモラスな描き方はいかにもホームドラマ的なそれ.市民ランナーのコミュニティや調整法,フルマラソンに関する蘊蓄の織り交ぜ方もごく自然でさすが.自己流のジョギングしかしたことのない私には新鮮な知識が多くてへー,と思うことしきり.
お話の最中,喉の小骨のようにずっと放置される違和感はラストで解消……されたのか? ぶっちゃけこんなのでええのんか? という気もしないでも.一般文芸を目指すのであればこの違和感やらラストやらは蛇足でしかないと思うんだけど,そこはクラニー先生の面目躍如ってとこでしょうか.帯曰く「“怪奇小説家=倉阪鬼一郎”のイメージを鮮やかに覆す、衝撃のマラソン・ミステリー!!」.むしろイメージ強化されますた.