神林長平 『言葉使い師』 (ハヤカワ文庫JA)

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

神林長平の第二短編集.下に挙げた三作に「美食」「イルカの森」「甘やかな月の錆」の六編の短編を収録.表題作の「言葉使い師」をはじめ,やけに気取った語りが,未だ尖って見えるアイデアにかっちり噛み合っているのがどの短編にも共通しているかな.
スフィンクス・マシン」は火星に発見された知性とのコミュニケーションからヒトの脳と心について語る.思弁小説? 受け止め方はいろいろありそうだけど,書かれているとおりに受け止めるのがいちばんわくわくするし,いちばん気持ち悪いと思う.
「愛娘」は長距離宇宙飛行を控えた時代の生殖,そして男と女の関係について.最初はえー? と思ったけど恒星間飛行を求めるなら子どもを産んで世代を重ねるよりはこの方がずっと効率がいいのか.小品のようで発想の飛躍がすごい.
「言葉使い師」は言葉を発することを禁じられ,テレパシーでのコミュニケーションのみが許された世界.メッセージはシンプルだと思うんだけど大仰な言葉の応酬がかっこいい.