澁澤龍彦 『高丘親王航海記』 (文春文庫)

高丘親王航海記 (文春文庫)

高丘親王航海記 (文春文庫)

貞観七年正月,天竺へ向けて出向した高丘親王の奇妙で幻想に彩られた旅の記録.
旅の先々で出会う幻想的な光景,奇妙な風習や人々もさることながら,その主人公たる親王の人物像がとても面白い.好奇心旺盛で歳に似合わない行動の軽さが愛嬌たっぷり.その内に秘めた天竺への,そして子どもの頃からの薬子へのほのかな想いはくすぐったくも苦くて甘い.そんな親王が旅に病んで老いていく姿は寂しくもの悲しい.
もどかしいロマンティシズムは『旅のラゴス』に似た雰囲気があった.面白かったです.いただきものなのに二年半近く積んでいてすみませんでした.