霜島ケイ 『カラクリ荘の異人たち2 〜お月さんいくつ、十三ななつ〜』 (GA文庫)

「表」と「裏」が接した賽河原町.奇妙な町で起こる騒動と空栗荘の住人たちの不思議で優しい物語第二弾.眠っているときの夢が現実へ影響を及ぼしてしまう大家が一向に起きてこないからさあ大変.

「どうしてか知らないけど、もしかして自分のことを好きな人間は誰もいないって思ってる? だからいつも一人でいるの?」
(中略)
「いい? あのね、そんなこと絶対にないんだよ!」
並んで歩きながら、采菜は大きな目で真っ直ぐ、睨むように太一を見ていた。
「だって地球には今、六十六億人も人間がいるんだよ。そんだけ人口がいて、その人のことを好きになる人間が一人もいないなんて、ぜっったいにない! 確率的にありえない! 日本だけでも、一億二千万人も人がいるんだからね!」

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互いが互いを心配する,思いやる.ウザいほど積極的で住人たちのその関係は友人というのとも,家族とも違ったもののように見える.この世界では"お人好し"の意味するところはぜんぜん違ったものなのかもしれないね.中秋の時期に町に現れる"薄売り"にあちこちに咲く彼岸花などに彩られた異世界の空気は濃厚,それにあてられた頭にもっと濃厚な,いろいろな形をしたヒトの想いがぶわーっと波のように押し寄せてくる.人心に酔う,ってこんな感じを言うのかね.