森田季節 『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』 (MF文庫J)

神様、人はケーキの飢えをじゃがいもで満たせるでしょうか。

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J) - はてなキーワード

MF文庫Jライトノベル新人賞・優秀賞受賞作.特に親しいわけでもない同級生からの電話,「僕、女の子を殺したんだ」.殺されては蘇り,そのたびに「いなかったこと」にされる,それだけのために存在するイケニエビトの少女と,イケニエビトを追いその記憶を食らうタマシイビトとの対決と逃避.
数年の時間を越える奇妙な青春もの.死や別れ,「私を忘れないで」的な根っこの部分は特別目新しいものではないと思うのだけど,全体的にどこか突き放したような独特の味がにじみ出ている.真国と烏子,もしくは明海と実祈の過ごす,短いながら甘いはずの時間もどっかしらよそよそしい.クライマックスのあれはイラストとの合わせ技で悪趣味極まりないと思うんだけど,それも併せて「青春」に対する作者の距離の取り方がよく現れてたような気がする.ものすごくざっくりいうと閉じた世界の非コミュ小説,みたいな.嫌いじゃないけどなんとなくもにょる.感想書きにくいと皆が言う(私も思った)のもむべなるかな.