中里十 『どろぼうの名人』 (ガガガ文庫)

どろぼうの名人 (ガガガ文庫 な 4-1)

どろぼうの名人 (ガガガ文庫 な 4-1)

「嘘つきは泥棒のはじまり」
お姉さまは意地悪です。文ちゃんを怖がらせたくて、こんなことを言うのです。
「じゃあ、泥棒の終わりは、なんなんですか?」
右手の人差し指を、まっすぐ上に向けて、お姉さまは答えます。
「天国」

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第 2 回小学館ライトノベル大賞・佳作受賞作.もうすぐ 15 歳になる佐藤初雪は,姉の知人の女性・川井愛の「妹」としていっしょに暮らすことになる.30 過ぎの子持ち女と女子中学生の間に存在する歪んだ「愛」をラプンツェルになぞらえて描き出す.
話は百合だけどプラトニックにはとどまらない.連想したのは「少女七竈」や「読書クラブ」の頃の桜庭一樹.裏側からじんわりにじみ出る性欲を気取ったユーモアを含みながらも乾いた文体で静かに綴る.人質のように結ばされた二人の関係は,女同士だからこそ成り立つ不安定なもの.愛の考えていることが説明不足で分かりにくいのは意図的なものかな.好き嫌いは割れそうだけど,綱渡り"だけ"の空虚な話をここまで読めるようにしているのは評価できると思う.これがおっさんと女子中学生だったらポルノになるか偽善になるか,どっちにしろ成り立たなくなるだろうなあ.私は良かったと思いました.