図子慧 『駅神』 (ハヤカワ文庫JA)

駅神 (ハヤカワ文庫 JA ス 2-2)

駅神 (ハヤカワ文庫 JA ス 2-2)

京成金町線の駅に気まぐれに現れては易を立てる謎の老人「ヨンバンセン」.ある事故を予知したことで彼は世間に知られるようになった.悩める人々は彼に占ってもらおうと駅に集まる.下町の駅を舞台にした人情噺.
話の筋は普通の人情噺.南国幻想ならぬ下町幻想が下敷きにあるのが少し鼻についたけども,そこに易を絡めた組み立てが面白い.根付く人々と通り過ぎる人々という二種類の人々の人情を描くには下町は絶好のロケーション.易学はまったく知らなかったこともあって作中で語られる卦や蘊蓄は正直ちんぷんかんぷんだったのだけど,とりあえず人間不在では成り立たない学問(?)であることはよく分かった.ついでに世の血液型占いや星座占いがいかにいいかげんなものか,も.知識を踏み台に人間観察とコミュニケーション能力,さらに人生経験を積まなければ本当に有益なアドバイスは送れない,ってことで町中で見知らぬひとに「占わせてください」と声をかけるのも勉強の一環なわけですね.本格的に勉強しようと思ったらかなり大変そうだけど面白そうでもある.