石原まこちん 『ソウルトレイン』 (講談社)

ソウルトレイン

ソウルトレイン

フリーター(月収 5 万・実家住まい),27 歳,童貞.レンタルビデオ店での気ままなバイト生活を送っていた「ボク」は同僚の彼女に一目惚れした.
THE3名様』で財をなした作者の初小説.バイト先のバックルームでの先輩(28 歳童貞)との不毛なやりとりと妄想とで空費される時間は『THE3名様』に似てはいるものの,比べるとギャグのオブラートは薄い.より「等身大」に描かれている印象が強いかな.あとがきを読むと作者のフリーター時代の,非生産的で楽しかった実体験が下敷きになっているそうで,なるほどそれでこんな不毛で非生産的な生活なのに穏やかで楽しそうに見えるのかあ,と.振り向いてほしいと願いながら行動らしい行動は何も出来ず妄想に埋もれるだけの,恋愛未満の何かが誰にも気づかれずに終わることが許される時間・空間.こういうのも終わらない青春の一つの形ってやつ,なんですかね.