木村航 『ミラクルチロル44キロ Aパート・チロルアレンジ』 (メガミ文庫)

あなたはいま生きています。
でも、わたしのたいせつな人は、もう生きられなくなってしまいました。
どうか彼女を助けてください。
あなたのいのちを、ほんのちょっぴり分けてください。

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44 キログラムの山のようなチロルチョコを抱え,冬の街頭で「いのちの募金」を募る大学生の田丸くん.気まぐれに投げやりに,「一生」の「いのちの時間」とひとつぶのチロルチョコを交換した中学生のつぼみは小学生の小太郎と彼の募金活動に協力することになる.
面白かったです.テーマはいのち.必然的に恋愛だとか家族だとか誕生だとか死だとかに繋がっていく.温度低めのつぼみの目線から描かれているのに,やたら暑苦しくてロマンチックなのはなんでなんだぜ.歌う佳名理,偏屈なおじいちゃん,生意気だけど餓鬼な小太郎ほか,スカしたテキストを使いこなして描かれる登場人物はいちいち生き生きしていて惹きつけられる.フェリックス・ゴンザレス=トレスの「プラシーボ」(いちばんうえの画像)もそんなお話の中でいいアクセントになっていた.現代アートってどこか素直じゃない感情の発露,みたいな気がするのよね.しませんか?
あと三月まうすのイラストがすっげー話に馴染んでいて良かった.レーベルの既刊七冊のうち*1三冊読んだだけの印象だけど,どれもストーリーとイラストとの親和性はかなり高いと思う.ひょっとしてここかなり力を入れている?
B パートの発売を楽しみにしてます.

*1:2008.12.2 勘違いだったので取り消します