浅暮三文 『夜聖の少年』 (徳間デュアル文庫)

夜聖の少年 (徳間デュアル文庫)

夜聖の少年 (徳間デュアル文庫)

この世界では子どもたちはある時期を迎えると体が発光を始める.それは大人になる準備が整った──抑制遺伝子を埋め込まれ,社会の一員になる──シグナル.清廉な社会を嫌った少年少女たちは地下に隠れ住み,過酷な生活を送っていた.
浅暮三文のデビュー三作目となる単行本.グレさんがデュアル文庫で書いていたとは知らなかった.いつぞやの文学フリマでサインをもらったのはもう何年前になるのかなあ.あのときの「ぬ」はいまも大事に積んでおります.
閑話休題.ストーリーは正統派の「SF っぽいビルドゥングス・ロマン」."うすのろ"こと少年カオルが地下で偶然見つけた巨人の謎を,気の強い少女マリアとともに探っていく.地下生活の危険や鬱屈,緊張感の描写は十二分.重苦しさがひしひしと伝わってくる.反面,緩急が少なくお使い RPG をこなすかのような話運びにはいまひとつ感情移入が出来ない.テーマの表面だけなら『ハーモニー』に似てなくもないんだけど泥臭さばかりが目立つ.あちらがスマートすぎるというのもあるんだけど.そもそも作者のメインフィールドじゃないってのもあるんだろうけどちと微妙でした.