映画『
ハスラー』や『地球に落ちてきた男』の原作者として知られる作者による十三の短編集.十数年前に死んだ両親がアパートに唐突に現れる
「母の訪問」と
「父さん」がベストかな.タイトル通り息子と母,息子と父の対になる短編.短いながら
エディプス・コンプレックスと
アブラハム・コンプレックスのひとつの形を余すことなく描いている.ほかにも熱を運動エネルギーに変換できる物質を発明した結果がこれだよ! の
「おお弾み」や,悪魔に魂を売って論文を代筆させた男の話
「学者の弟子」,歌う草原に覆われた惑星とそこに住まう夫婦の顛末
「マイラの昇天」といったあたりが良かった.あっと驚くような仕掛けはないものの,ユーモラスな終末や皮肉っぽい悪魔のいたずらといったスタンダードな SF 短編からから人間の執念・情念をしっとり描いたものまで,すべて SF のガジェットを使いながら作品の幅は広く,しかもどれをとってもハズレがない.面白かったです.