柴村仁 『プシュケの涙』 (電撃文庫)

プシュケの涙 (電撃文庫)

プシュケの涙 (電撃文庫)

なんで、こう、悩みばっかりなんだろう。
たとえいま悩んでいる問題が解決したとしても、私が私であり続ける限り、悩みは次から次へと生まれて、死ぬまで独りで悩み続けるんだろうな。これからもずっと、「うまく眠れない」とか「お金がない」とか「あの人が嫌い」とか「あいつ消えてくれればいいのに」とか、横になって目を閉じるたびにそういうことばかりをグズグズ悩んでいくんだろうな。
……やだな、そんなの。
考えるだけで疲れちゃう。
生きるのってしんどいよ。

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夏休み,ひとりの少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した.彼女はなぜそんなことをしたのか.彼女と同じ美術部員で"変人"の由良と飛び降りる姿を目撃した榎戸川は真相を探るため行動する.
女子高生の自殺とそこへ至るまでの周辺事情について.これはあれだ,セカチューだな.作者のにおいとか個性といったものがぜんぜん感じられなかったセカチューを悲恋のフレームワークというか汎用テンプレというかとにかく土台に利用して,上から色を乗せた小説だ.最初から「死ぬこと」が明かされている話だけあって,苦しかったり楽しかったりした日々を読むのは空しいものと思うものの,必要以上に重苦しくせず,弄りすぎない文章でさほど気負わずに読ませられる感じ.といっても死の真相はこちらのほうがずっと残酷なもの.素直に受け入れがたい気持ちのほうが強く残った.上手下手と好き嫌いは別物だからね.