御影瑛路 『空ろの箱と零のマリア』 (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア (電撃文庫)

"拒絶する教室".すべてをリセットしながら 3 月 2 日を何度も繰り返すその教室に,ひとりの転校生がやってきた.この教室にいる"箱"の"所有者"を殺せば"拒絶する教室"は終わるとその転校生,音無彩矢は言う.
いくつかの仕掛けでミスリードを誘いつつ,ミステリ風に謎解きが進む.たった一日,一定のルールのもとで展開される犯人捜し.序盤はいまいち煮え切らない話運びでどうだろうと思ったのだけど,彩矢と一輝の立場を逆転して見せた中盤から話の輪郭が一気にはっきりしたものになった.教室の中の孤独と,初対面でかけられた「許さない」との言葉の意味を明確にすることで,突飛な言動の(それこそ降臨してきたような)女の子に一瞬で血肉を与える.手法としてはそんな目新しいものではないはずなんだけど,これほど鮮やかにやってのけた作品にはもう長く出会っていない気がする.
粗というかもう少し詰めてほしい部分がないでもなかったけど概ね良かったです.三年ぶりの新作ということで,つくづく良かったなあ……とあとがきを読んで思うことしきりでした.