森橋ビンゴ 『ナナヲ♥チートイツ』 (メガミ文庫)

ナナヲ・チートイツ (メガミ文庫)

ナナヲ・チートイツ (メガミ文庫)

若き麻雀打ちの中也はヤクザの代打ちとして父とコンビを組んで活躍していたが,大金のかかった勝負で父に裏切られ,多額の借金を背負い女組長の下に売り飛ばされる.鬱々とした日を送るある日,中也に闇麻雀トーナメント出場の話が持ちかけられる.借金を返し自由を手に入れるため,コンビ打ちのパートナーとして中也が選んだのは同じように親に捨てられた七緒だった.
カバー曰く「ライトノベル界初の、本格麻雀闘牌ストーリー」.登場人物を少年少女中心にしたうえでおっさん向けハードボイルドの文法をそのままライトノベルに移植したかのような話なのだけどこれが妙に食い合わせがいい.ひとくちに「ライトノベル」といってもいろいろあるけど,普遍的なエンターテイメント志向の話を書く分にはかなり相性がいい,っつうか互換が効くのな.もちろん作者の腕に依るところがムチャクチャ大きいのだけど.筋だけならステレオタイプなストーリーにライトノベルらしからぬひりひりした緊張感を塗し,退屈する暇のない話に組み立てることに成功していると思う.格好をつけすぎない,キヨスクで無造作に買われて気軽に読み捨てられるのが相応しい(褒め言葉),純粋なエンターテイメント.良かったです.